2023.10.02
知って欲しいこと
東京に入居される方に 東京ルール
いつもブログを見て頂きありがとうございます。
今日は所謂、紛争防止条例(東京ルール)について話したいと思います。
この条例は、住宅の賃貸借に係る紛争を防止するため、原状回復等に関する民法などの法律上の原則や判例により定着した考え方を宅地建物取引業者が説明することを義務付けたものです。(東京都住宅政策本部:『賃貸住宅紛争防止条例』より)
賃貸住宅の契約において
「借りる側」「貸す側」があります
かつて退去時の原状回復や入居中の修繕が発生した際に「どちらが(貸主か借主か)費用を払うのか」といったことで揉めることがただ多く、特に入居者が不当に高額な費用を支払わされるケースも相次いでいました。
このようなトラブルを防止するため、2004年10月より施行されたのが『東京における住宅の賃貸借に係る紛争の防止に関する条例』(以下:紛争防止条例)です。
東京都が定めた条例
紛争防止条例は東京都がトラブル防止のために独自に設定している条例で、広くは「東京ルール」とも呼ばれています。
東京都庁のサイトにもガイドラインが掲載されており、どんな説明がされるのか詳しく書かれています。
例
※退去時の原状回復の基本的な考え方
※入居中の修繕の基本的な考え方
※契約における賃借人の負担割合について
※修繕及び維持管理等に関する連絡先
これまでトラブルになりがちだった部分が重点的に定められ、契約前に「どちらが負担するのか」「どうしたら支払いが発生するのか」を知ることができるようになっています。
どんな物件に適用される?
対象となるのは以下の要件を満たす物件です。
・東京都内にある、居住用の賃貸物件
・2004年(平成16年)10月1日以降に新規契約した物件(更新契約は対象外)
・宅地建物取引業者(以下:宅建業者)が媒介、または代理を行う物件
そのため都内にあっても店舗や事務所物件では適用されませんし、東京都以外でも適用範囲外です。
「千葉県の宅建業者が、埼玉県に住むお客様に、東京都内の物件を紹介・契約する」場合は適用となります。
基本的に「都内の居住用物件を賃貸借契約するなら適用」と覚えておくと良いでしょう。
宅建業者に対する義務
もしも賃貸借契約を結ぶ際に書類の用意が無かった
説明をされなかった
といったことがあった際は、宅建業者が指導を受けることになります。
前述の通り「都内の居住用物件を賃貸借契約するなら適用」されるため、該当物件であれば紛争防止条例の説明を行うことは業者の義務です。
特に他県から初めて都内へのお引越しをお考えの方は、契約時に書類が用意されているかご注意くださいませ。
『紛争防止条例』が制定されて何が変わった?
条例が制定される以前は、前述したように費用の支払いに関するトラブルが相次いでいました。
そのトラブルの多くは入居者が被害に遭うケースで、床の傷や壁紙の劣化なども入居者負担として請求され「これは自分が支払うべきなのかなぁ……」と思いつつ、「でもはっきり取り決めもしてなかったし、揉めるのも嫌だから支払っておこう」と業者に言われるがまま支払いをしてしまうことがあったのです。
もちろんこういったケースの全てが不当な請求とは限りませんが、「もしかして支払わなくて良かったかも?」という思いが残るのはトラブルの元です。
契約前に知ることで防げる!
契約前に「この場合は入居者(又はオーナー)が支払うもの」「部屋の入居者とオーナーで、この割合で負担する」といった取り決めがされておけば、入居者が不当に請求を受けることが無くなります。
オーナー視点から見ても事前に費用の負担割合を決めておけば「そんな話聞いていません」と言い逃れされることを防げるため、どちらにとってもトラブル防止となる制度となっているのです。
どんな項目を確認するの?
都庁のサイトでは説明書のモデルが閲覧できるようになっています。
記載される項目は以下の通りです。
[冒頭]物件を媒介した業者の情報
[ A ]退去するときの原状回復・負担内容
[ B ]入居中の修繕・負担内容
[ C ]修繕・維持管理等に関する連絡先
冷蔵庫を置いたことで壁に電気ヤケの跡ができてしまった場合のように、通常生活していればできてしまう仕方のない傷や汚れは、基本的に賃貸人が負担することとされているのです。
このように費用の負担に関して明確に基準が設けられることによって、「これは私が払うべきなの?」というトラブルが減っていったのです。
『東京ルール』は首都圏でも広がりつつある
紛争防止条例は東京都だけのルールですが(2021年11月現在)、前述したように実際トラブル防止に繋がることから他県の物件での契約にも『賃貸住宅紛争防止条例に基づく説明書』を取り入れる業者が増えています。
他県でも従わなければいけないの?
仮に千葉県の物件を契約する際に『賃貸住宅紛争防止条例に基づく説明書』を出されたとしましょう。
まず千葉県には『紛争防止条例』が無いので、千葉県で使用されたとしても行政からの拘束力はありません。
もし「説明書は用意されていたけど、退去時の負担割合が記載されていなかった」なんて場合でも、行政から宅建業者に対して指導が入ることはありません。
紛争防止条例は“東京都の物件を対象とした、東京都の条例”であることが大前提。
よって東京都以外での説明書はあくまで各宅建業者の判断で「うちの会社ではこういった約束事を取り決めています」と提示しているに過ぎないため、言ってしまえば企業の独自ルールでしかないのです。
みんなが安心できる契約を目指して
しかし、賃貸人・賃借人どちらの視点から見てもトラブル防止に繋がる決め事であることは明確。
だからこそ宅建業者は『賃貸住宅紛争防止条例に基づく説明書』を他県での契約でも利用しており、それが神奈川県、千葉県、埼玉県と徐々に広まってきています。
今は「東京ルール」と呼ばれ狭いエリアだけでの適用となっていますが、いつかは全国に広まっていくかもしれませんね。